合理的配慮とは?
「合理的配慮」という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、具体的にはどういうことを指すかパッと思い浮かびますか?
文部省のガイドラインには以下の通りです。
1.障害者の権利に関する条約における「合理的配慮」
(1)障害者の権利に関する条約「第二十四条 教育」においては、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(inclusive education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。」を位置付けている。
(2)同条約「第二条 定義」においては、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。
2.「合理的配慮」の提供として考えられる事項
(1)障害のある児童生徒等に対する教育を小・中学校等で行う場合には、「合理的配慮」として以下のことが考えられる。
(ア)教員、支援員等の確保
(イ)施設・設備の整備
(ウ)個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮
(2)障害のある児童生徒等に対する教育を小・中学校等で行う場合の「合理的配慮」は、特別支援学校等で行われているものを参考とすると、具体的には別紙2のようなものが考えられる。
(3)「合理的配慮」について条約にいう、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」についての考慮事項としてどのようなものが考えられるか(例えば、児童生徒一人一人の障害の状態及び教育的ニーズ、学校の状況、地域の状況、体制面、財政面等)。
一言でいうと「障害者が社会の中で出会う、困りごと・障壁を取り除くための調整や変更のこと」です。
なんとなくわかるけど、文章では具体的にはわかりにくいですよね。では、こちらの画像を見て下さい。
左から「平等」「公平」「環境」です。
「平等」は大人も子供も関係なく一段箱が積まれています。でもこれでは一番小さな子供は試合が見れませんね。
「公平」では一番小さな子供の段が二段になり、同じ視界になりみんなで試合がみれるようになりました。
「環境」は木で作られた壁から金網に変わり、段がなくても試合が見られるようになりました。
この中で理想的なは「環境」ですね。実は発達障害の子たちの環境はいわゆる定型発達の子たちにとっても過ごしやす環境なんです。この言葉をネットで見た時は驚きましたが、確かにそうだとうなづけました。
もうすぐ就学のシーズンですので、今回は学校に伝えやすい合理的配慮について事例を基に紹介していきます。
事例①【授業中に一方的な発言を繰り返すAさんの場合(小学校)】
起こっている問題は、授業中教師の発問中や友達の発言中に割り込んで話し始めたり、指名されると延々と話し続けること。先生が声をかけるとしばらくは発言を聞くことが可能だが我慢ができずに勝手な発言を繰り返してします。休み時間では友達の話に割り込み、一方的な発言を繰り返してしまうためトラブルになることがある。
ここの小学校ではどう配慮していったか見ていきましょう。
まずはどうしてそうなるのか考えていきます。
◎今求められているものは何かの理解や、適切な状況判断が難しいため
◎「発言したい、発表したい」という衝動をコントロールすることが難しいため
◎話している間に別の話題が頭に浮かんでしまい、話の内容がそれてしまうため
◎学習内容が理解できずに飽きてしまうため
〈結論〉
学級全体で統一したルールを決めて掲示する 。「発言の仕方、聞き方の約束」を、教室の見やすい場所に掲示し、 常に意識できるようにする(ルールが守れないときは、掲示を指 し示したりみんなで読み合ったりして確認する)。
教室の目に付く場所に掲示することで、話し方や聞き方の約束が意識できるようになりました。
問題提起、動機付けとアセスメントして問題解決に至ったようです。
発言ルールを学級で決め、掲示したことでAさんだけでなくほかの児童意識もすることができますね。
他にも「担任が声をかけやすい座席にする」「発言は順番に行えるよう意図的に設定し、質問内容は板書する」したようです。
事例②【文字を書くことが苦手なBさん(小学校・低学年)】
B さんは、文字を書くことが苦手で鏡文字や似ている文字の間違いがある。
漢字の細かい部分で書き間違いがあったり、思い出せないこともある。
また、繰り返し文字を書く宿題では覚えられず、宿題もやらなくなってきた。
どう配慮していったか見ていきましょう。
まずはどうしてそうなるか考えていきます。
◎形を正確に捉えることが難しいため (形の違いや傾き、方向など)
◎形を正確に記憶することが難しいため
◎目と手を協応させることが難しく、不器用さがあるため
<結論>
①文字の形や構成を捉えることができるようにする
○書き方の注意するポイントを声に出しながら、なぞって覚える。
○パーツに分けて言語化して覚える。
○部首やパーツの構成を捉えたり、細部に注目したりできるようにする
漢字をパーツに分けて言語化することで、構成を捉えて書ける漢字が増えました。
宿題は文字を繰り返し書くのではなく、部首カードやいろいろなプリント(例:「漢字足し算」「間違い探し」等)を用意することで、自分で取り組めるようになりました。
②意味付けや補助的手段の活用で、記憶したり思い出したりする手助けをする
○意味付け(例:「部首の意味を知る」「絵と対応させる」「成り立ちを知る」)
をして、文字を記憶することができるようにする。
○補助的手段で文字を思い出し、安心して学習に取り組めるようにする。
③使いやすい道具等を用意したり、書く量や時間を調節したりする
○使いやすい鉛筆や消しゴム、書きやすいマス目や罫線を用意する。
○ICT機器を使って学習し、楽しみながら、できた実感や達成感がもてるよ
うにする。
○書く量を減らして負担を軽減したり、書く時間を十分確保したりする。
息子は上記の子と同じように文字を書くことを苦手としています。
宿題や学校でのプリントは先生がまず赤で薄く下書きしてくれるのでそれをなぞる形で授業を受けています。連絡帳もみんなと同じように書くために下書きをしてくれます。
上記にある「部首カード」や「パズル」は学校になければ保護者の手作りを渡せば利用してくれると思います。うちでは他学年ですが保護者の手作り学習グッズを使っている子もみえます。
今は一人一台PCが貸与されているのでそれを利用したものも学校に伝えやすいです。
例えば板書が苦手な子は写真を撮ったり、文字を書くことは苦手だけどキーボードは覚えた子ならPCで作文を書くなどです。
息子は現在1年ですが、支援級で少しづつローマ字を教えてもらっているようです。
今後のことを考え先生から提案してもらい、同意して進めてもらいました。
学校によってはすぐに対応できないことも多々とあると思いますが、事例を基に話すと先生方も対応しやすいと思います。ネット上にはいくつも事例があったので子どもの困りごとと似ている事例があれば、提示してみるのも一つの手かと思います。その際は、保護者側でもできる事があれば学校側と協力して出来ると一番いいですね。
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